労働時間マネジメント改革
頻発する「サービス残業」事案に象徴される労働時間問題は、企業経営の先行きに暗雲をたなびかせています。
多くの企業で長年にわたってその解決が模索されていますが、うまくいった事例は僅少です。その主な理由は、問題が「労務」や労働法令の枠の中だけで検討されている点にあります。
ところが、実際には、労働時間問題はワークスタイルと組織構造の変革に関わる問題なのです。
ソフィアコンサルティングは、近年流行の「ワークバランス論」に明確に異を唱える立場から、経営改革としてのタイムマネジメント改革をご提案しています。
労働時間増大の背景
90年代後半を底にして増加に転じたわが国の労働時間は、今世紀に入って一貫して増加を続けています。
時短政策の背後で増加に転じた労働時間
わが国の労働時間数は、90年代後半を底に、増加に転じている
年 度 | 年間総実労働時間 (1)+(2)−(3)× ((4)+(5)) |
|||||
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年間所定 労働時間 (1) |
時間外 労働時間 (2) |
1日所定 労働時間 (3) |
年休 取得日数 (4) |
その他 休暇日数 (5) |
||
平成11年 | 1989.1 | 1893.2 | 191.6 | 7.72 | 10.3 | 2.1 |
平成12年 | 2019.5 | 1896.5 | 216.5 | 7.73 | 10.2 | 1.9 |
平成13年 | 2020.5 | 1897.2 | 207.7 | 7.74 | 9 | 1.9 |
平成14年 | 2027.8 | 1899.3 | 212.2 | 7.75 | 8.9 | 1.9 |
平成15年 | 2038.6 | 1899.4 | 224.4 | 7.75 | 9.1 | 1.9 |
平成16年 | 2055.9 | 1897.1 | 242.5 | 7.75 | 8.9 | 1.9 |
平成17年 | 2052.1 | 1896.3 | 240.4 | 7.76 | 9.0 | 1.9 |
※出所:労務行政研究所2006年調査
※調査対象:上場・大手企業と従業員100名以上の中堅企業がほぼ半々の割合
その背景には、グルーバル化に伴う競争の激化によって業務量が増大していることにあります。ただ、その根底には、競争環境の変化によって徐々に引き起こされた企業風土の変貌があるのです。
低下する組織モラール
今多くの組織に渦巻いているのは、会社やその方針、制度、上司に対する“不満”です。溢れかえる“不満”は、倫理観やコンプライアンス意識を低下させ、一方では不祥事や事故を招き、組織コミュニケーションや技能継承を阻害しています。
「サービス残業」、長時間労働、心身にわたる健康管理問題等の労働時間問題は、意外にもこうした組織モラール低下と切り離せない関係にあります。
的外れな「対応策」
このように労働時間問題は組織体質に深く関わっているにもかかわらず、多くのケースで行われているのは、時間管理方式の変更や残業削減運動等従来型の労務的対応です。
ところが、このような対応では、効果が上がらないばかりか逆に弊害さえ招きかねません。
不可欠な「働き方」のビジョン
必要とされているのは、組織と「働き方」を変革することを通じて、組織モラールを高めることなのです。
ところが、近年流行の「ワークライフバランス論」等の主張は、今まで以上に問題を「個人」と「労務」マターへと押し込めるばかりで、パラダイムシフトを進められないでいます。
人材には、高いモチベーションによって仕事をし、活力溢れる組織を生み出していくためのビジョンと希望が必要なのです。
ナレッジワーキングの雄大なビジョンへ!
パラダイムシフトのひとつの鍵は、従来型の「労働時間」概念の転換にあります。
「労働時間」とは何か? それは、労働基準法を軸にした法体系が規定する“時間の区切り”に過ぎません。それは、私達が知恵とアイディアを生み出し、豊かな成果の獲得につなげていく“時間”ではないのです。
多くの知恵を、私達は「労働時間」外の時間で学習し仲間と対話する中で獲得しているのではないでしょうか?
そう、真の仕事の成果は、いわば広大な「非労働時間」によって支えられているのです。
新時代のタイムマネジメントは、この点に目を向けてはじめて、人材のモチベーションと組織の活力を高める有効なマネジメントへと生まれ変わるはずです。