定期レポート2014年10月
ソフィア・アイ:“感染”する社会
最近の世界を見渡たすと、そのトレンドは、どうも悪いことに“感染”というキーワードで括り出せるように思えます。
感染というと、ウイルスとか細菌とか、転じて新興宗教的な極端な思想とか、要するに「悪いもの」「害悪に属すること」が伝わっていくということです。
それに対して、良いもの、有益なことが伝わるのは、「伝承」とか「継承」、「移植」等と表現されます。。
どうも、感染がキーワードとなる社会、時代は、良くない(問題の多い)世界のようです。
その第一は、感染爆発している模様のエボラ出血熱です。
感染力が非常に高い凶暴なウイルスであることに加え、現状ワクチンや治療薬がない。そのため致死率は9割にも達するそうです。それが、西アフリカ以外の地域への流出も時間の問題になっているようなので、ことは深刻です。
第二は、やや性質は異なりますが、政治資金問題にも「感染」の気配を感じます。
これはそもそも、誰がどう感染しているのかが明確ではありませんが、よくないことがどんどん広がっているのに、「ワクチン(対策)」も「治療(知恵)」も存在しない模様なのです。
うちわを配って法務大臣が辞任し政治が混乱するなど、実につまらないことです。
しかし、だれもこれを食い止めようとしておらず、何度も同じ問題が繰り返されるのに、それを食い止めるための仕組みが取られていません。
そのため、一旦「流行」が始まると、どんどん「感染」が広がっていく。病気と同じです。
もっとも、流行を煽っているのは、もっぱらマスコミですが、そもそも流行=感染が煽られていること自体、ウイルス感染よりもやっかいなことが分かります。
大臣候補者の政治資金の出入金に問題があるかどうか、手続き的には簡単にチェックできます。第三者の税理士や会計士による監査を義務付けてもいいし、各政党が「監査委員会」のようなものを作って監査してもいい。実業界では当たり前に行われていることの一部をきちんとやればいいだけのことです。
それを、「(不正疑惑に関する)説明責任は政治家個人の責任」とか、理屈とも浪花節とも判断しかねる訳の分からない論理が延々とまかり通って、「感染」は放置されたままなのです。どうかしています。
第三は、これが実は一番重大事に思えるのですが、「イスラム国」です。
表面上は、新興宗教的な「イスラム原理主義思想」の感染なのですが、もちろんそんなレベルでは整理できない、極めて根の深い「感染」です。
これは、アメリカはじめ西欧諸国が主張するような単なるテロ組織には見えません。
戦闘員は、イラク、シリア以外から集まった約1万5千人の外国人を含め5万人にも達するそうです。(※ちなみに、外国の傭兵を大量に雇っているのは、フランス軍だって同じです。)戦力は、戦車、装甲車といった重火器はもとより、最近では航空機も使っているようです。資金は、石油売買を中心に、1日当たり2億円を獲得できるそうです。軍事部門だけでなく、旧フセイン政権の幹部を中心に、国家としての統治・行政能力も備えています。
こうした背景があって起こっている思想の「感染」です。
となると、イスラム国、一体何が悪いんでしょうか?
イスラム思想を共有する人々が、あの中東の一地域で独立運動をしているということのではないでしょうか。
その独立の主張の中に、国際的に様々な問題を引き起こしているアメリカ型グローバリズムへの反対が入っているなら、共鳴するのはイスラム教徒だけではないはずです。
支配地域の住民を残虐な形で支配しているとしきりにマスコミは報道しますが、中国や北朝鮮と比べてどちらが残虐か、誰も一概には判断できないでしょう。
このような政治勢力があの地域に出現した起源は、言うまでもなくアメリカ大統領・ブッシュジュニアが不用意に引き起こしたイラク戦争にあります。それによってフセイン政権が崩壊して生まれた混乱の中から、いわば必然的に登場してきた政治勢力なのです。アメリカは、このことを反省することの方がよほど重要な「国際貢献」のはずで、いきなり空爆を始めるというのは、安直の謗りを免れないでしょう。
西欧各国からイスラム国へ走る若者達の思想は、性急で刹那的で到底大人の視点からは是認されるべきものではないでしょうが、彼らが自国で今のままの人生を送ることに何の希望も価値も見出せない状況に晒されているのは事実でしょう。
そうした思想的にも物質的にも閉塞した時代状況、これはもちろんわが国日本も例外ではないのです。
多くの企業組織も、現在、マイナスの精神性(メンタルヘルス不調、モチベーション低下、組織コミュニケーションの断絶等)の“感染”を克服し、優れた価値の「伝承」や「継承」を回復させる課題に直面しています。
「感染」を食い止めるには、歴史の長い射程を見据えた思考と社会の力が必要でしょう。
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