定期レポート2012年4月
ソフィア・アイ :プロフェッショナルとしてのメンタリティ
人材がその道のプロと言えるかどうかには、いくつかの要件が考えられます。
特に大事なポイントは3つあり、?継続的な業績を挙げていること、?高い専門性
(特定分野の知識・技術、スキル)の保有、?仕事と成長へのモチベーションです。
??は当然としても、?のモチベーションには人によっていくつかの考え方が
ありうるでしょう。仕事への直接的な意欲、やる気だけでなく、その成果を目先の
利益を越えてより社会的水準にまで高めようとする倫理観等のメンタリティも含まれます。
モチベーションがあれば、??は自ずと高まっていくので、3つの要件の中でも
最も重要かもしれません。
さて、先日来新聞紙上をにぎわせているいわゆるAIJ事件は、まさにこのプロとしての メンタリティが問われる象徴的な出来事です。
AIJ投資顧問による受託年金資金の巨額消失事件、これは国民誰にとっても他人事
ではない重大事件です。
ただ、投資顧問がすべて年金資金の運用指図をし、受託運用機関である信託銀行等が
その運用実態に責任を持たない仕組みは、関係者なら誰もがおかしいなとうすうす感じ
ていました。ところが、今回の事件は、現に2000億円にも上る資金の大半が運用の
失敗によって消失するまで、監視当局も資金の出し手である年金基金も誰も気づかな
かったということになっています。
また、当の投資顧問社長は、国会の参考人招致でも、
自らの利益を図った詐欺的行為を一貫して平然と否認しています。
消失した資金の出し手のほとんどは、比較的中小の厚生年金基金です。こうした小規模
ファンドは、近年の低金利や日本株低迷で資金運用実績が上がらない焦りに付け込まれ、
高利をうたったAIJの詐欺的営業にまんまと乗せられたようです。
ところで、投資顧問や信託銀行も問題ですが、最大の問題はいかにも被害者に見える厚生
年金基金側ともいえます。というのも、彼らはマーケットの分類では「機関投資家」と
呼ばれるいわばプロの投資家です。ところが、基金には実は資金運用のプロはほとんど
いない実態があります。それは、その常勤役員が、厚生労働省等からの天下り役人の
まさに巣窟だからです。
最近でこそ多少改善されたといわれますが、以前は企業が厚生年金基金を設立しようと
するときは、年金行政関係の天下り役人を受け入れることが、実質的な認可条件になっ
ていました。
もっとも、こうした天下り役人がきちんと仕事をするのならまだいいですが、彼らは
大体において事務職員に仕事は任せきりで、自分は机に座っているだけか、せいぜい来
客対応をするくらい。現に今回報道されるインタビューを聞いていても、運用を勉強し
プロとしての責務を果たそうとする意志そのものがありません。それでいて、年収1000
万円を優に超える報酬を受け取っているのです。
AIJ事件では、こうした天下り役人天国としての厚生年金基金が投資顧問という名の
詐欺の餌食になりました。何千億円という金額は大きいですが、その出所は、年金基金に
加入する各企業の社員が、毎月何千何万円という単位で長年こつこつと払い続けてきた
血の資金です。
問い直されるべきは、「公務員天国」の中で、きちんとしたプロの仕事が行われていな い組織のあり方と、その中で溶解してしまっているプロフェッショナルとしての精神性 なのではないでしょうか。
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