定期レポート2012年1月

ソフィア・アイ :意思決定の質を高めるには

 

2012年は少なくとも表面上は静かな幕開けとなりましたが、昨年を振り返るとまさに波乱の一年でした。その教訓をこれからの経営の道程にぜひとも生かしていきたいものです。


2011年は、国家的災害となった東日本大震災、それを巡る政府の対応にはじまり、後半にはユーロ危機や企業統治を巡る大手企業での不祥事もあり、いざというときの意思決定の重要性、リーダー・指導者の資質が問われた1年でもありました。
世の風潮は、意思決定の質を高めるためにルールや法令による縛りを強化する方向にありますが、監視を強めるだけで人の意思決定(判断)の質を改善できないことは、まさに電子機器メーカーO社の事例が教えるところです。
では、どうすべきなのでしょうか?

 

あるビール会社のCMに、案内役の俳優・妻夫木聡が特殊なエレベータに乗って各階いる人生の先達に薫陶を仰ぐというのがあります。その最新作に登場するビートたけしは、妻夫木の「人生で一番大切なものは何か?」との質問に対して「それは礼儀だよ」と答える。はて、なぜ「礼儀」なのでしょうか…。


私事ですが、つい先日東京山手線の車内で、そのたけしの言葉を象徴するような出来事に遭遇しました。 山手線に乗り少し離れた場所に行く時は、事故が起きないよう思わず祈ってしまいます。それくらい遅れが頻繁で、ついつい心の余裕もなくりがちです。その朝、新宿から品川に向かっていると、渋谷辺りで目の前にひとりの老人が現れました。年齢はおそらく80歳ぐらい。足元がおぼつかず、目も少し不自由そうです。そこで、早速立ち上がって「お座りください」と声をかけたのです。ところが老人は、「いえいえ、次で降りますので」と丁重に辞退されます。そればかりか、降りぎわにはわざわざ「どうもありがとうございました」と会釈までして静かに立ち去られました。
この老人の紳士然とした一連の立ち居振舞いは、ずっしりと心に響くものがありました。今は元気な自分が同じくらいの年齢になり逆の立場になった時、果たして同じようにできるだろうかと。病を抱え、身体も思いのままにならない。親族友人の多くが先立って孤独が深まり、自分の死も近づいてくる。そんな中でも赤の他人に対して深い配慮を持って接することができるだろうかと。察するに、こうした高貴な態度の裏側には、この方が身に付けた確かな倫理感とそれを長い人生の中で保持し続けた深い教養があるのだろうと思えたのです。

 

つまり、礼儀とは、その人が人生において積み重ねた行為とその中で醸成した思想が示されるものです。何の利害関係もない一度限りの邂逅、そのようなときにどう振舞えるかで、その人が思想とそれに基づく判断(意思決定)の質は試されるといえでしょう。

意思決定の質を高める、いざというときに最善の判断を下し適切な行動を取る…、詰まるところそのためには、よりよい判断と行動ができる能力と倫理観を備えた人材を育てておくしかないのです。監視ではなく。




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